つらい症状があっても、病名や原因が分からなくて苦しんでいる方はたくさんいらっしゃると思います。
この記事は、20年もの間病名が分からない発熱と炎症(腹痛)に苦しんだ私の友人からのメッセージです。
以下、私の友人から提供された文書を掲載いたします。
はじめに
はじめまして。私は30代の男性で、当ブログの管理人の友人です。冒頭に紹介があったとおり、20年以上もの間原因不明の病気に悩まされていましたが、最近この病気が「家族性地中海熱」という病気であることが分かりました。
後ほど説明しますが、この病気であると分かったのは、数々の検査や大病院の医師の力ではなく、インターネットの情報のおかげでした。
私自身は、ブログやホームページの運営をしていないのですが、昨年、インターネットやSNSのおかげで、自分の病気を特定することができ、さらには同じ病気の方と連絡を取ることができました。
インターネットやSNSにおける誹謗中傷が社会問題となっていますが、一方でこれらが持つ有用性を改めて実感し、同じような状況に苦しむ人の力になれないかと考え、微力ではありますが、ブログへの記事の掲載を依頼しました。
今後は難病の関係でいくつか記事の掲載をお願いしようと思いますが、まずは私の体験についてお話したいと思います。
症状について
私の症状は、発熱と炎症による痛み(主に腹痛か胸痛)が、不定期に起こるものです。短い周期では2週間から1カ月、長い周期では半年~1年ほどの期間に症状が現れ、痛みや熱は一週間程度で収まります。ここ数年では、平均して年間5、6回程度で、頻度は低くなっているように感じます。
具体的には、発熱は37~38度台、炎症は血液検査でCRP15程度の数値が出ます。症状が出たときは、動けないほどの強い痛みが出ますが、高熱が出ないことや頻度が高くないことから、この病気の症状としては比較的軽症と診断されています。
これまでの経過
もう20年ほど前の話なので、正確にいつからか、どのような症状が始まりだったのかは明確には覚えていませんが、高校生や大学生時代には、少しずつ症状が出始めました。
明らかに強い症状が始まったのは大学生の頃で、1~3カ月に1度、強い胸痛と発熱(38度台)が現れるようになりました。熱はそれほど気にならなかったのですが、胸痛が辛く、呼吸が非常に浅くなり、1~2日は苦しくてベッドから出られない状態に陥りました。
最初は地域の診療所を受診していましたが、原因が特定できないことから、総合病院を何度か訪れ、診察を受けました。
受診した呼吸器科では、血液検査を受け、CRPが15程度まで上昇していることから、なんらかの原因で炎症が起こっていると告げられました。その頃の医師との様々なやり取りについて思うところはあるのですが、長くなるので割愛します。腹部や胸部のCTやレントゲン等を受けましたが、身体のどこにも問題はなく、原因は分からないとの説明を受けました。
そのうち、胸部ではなく、腹部に強い痛みを覚えるケースも出てきました。腹部に痛みが出始めて最初の数年は、自分でも同じ症状だとは気づきませんでしたが、①発熱があること、②CRP数値が15程度まで上昇することという共通点があり、痛みが現れている場所だけが違うということから、同じ病気からきている症状なのではないかと考えるようになりました。
そこで、総合病院では、まず総合診療内科を経由することにしました。しかし、結果は同じことでした。総合診療内科では、「腹部に痛みが出ているなら消化器科、胸に痛みが出ているのなら呼吸器科」という単純な割り当て方しかされなかったのです。
社会人になってからはさらに辛い目にあいました。周囲から冷たい言葉を浴びせられることもあり、何度も仕事を辞めたいと思いました。
また、上司が変わるたびに説明が必要になり、その都度病院を受診するよう強く説得されました。社会人になって数年が経った頃、私はもう病院に行くことにうんざりしていました。どこの病院に行っても、医師の説明は私の想定の範囲内になってしまい、医師も私も諦めているような状態で医療費だけがかさむこととなったからです。私は解熱鎮痛剤としてポピュラーな「ロキソニン(ロキソプロフェン)」を飲んで、ただただ寝続けて耐え忍ぶことで病気と付き合っていました。
社会人8年目、大きな病院で徹底的に検査を受けるよう上司から提案がありました。
その頃には、胸痛がでることはほとんどなく、主に腹痛が出るようになっていました。地域の総合病院から、さらに大きい病院を紹介され、私はそれまでにも何度も受けてきた「血液検査」「CT」「胃カメラ」「大腸内視鏡」「バリウム」なんどの検査のほか、「カプセル内視鏡」の検査を受け、「潰瘍性大腸炎」はもちろん、「クローン病」や「膠原病」を含めた様々な可能性を考慮の上診断を受けました。
最後に医師から話があったのは、概ね次のような内容でした。
「あなたの身体には、不定期に発熱と強い炎症が現れて、そのために腹痛が起こっていることは事実です。しかし、検査をした結果、あなたの身体にはなんら問題は見当たりませんでした。私だけでなく、複数の医師と検査結果について細かく検証しました。そして、あなたの発熱と炎症は、約1週間程度で収まり、血液検査では完全に健康な状態に戻ります。このような症状が現れるということは、何か人と違う原因があるとは考えられますが、正直、同じように原因が特定できない病状に苦しんでいる方はたくさんおられます。幸い、あなたの場合は命にかかわるような重篤な症状が出ているわけではなく、1週間程度で完全に回復し、症状が現れたときには解熱鎮痛剤で対処することがある程度はできているので、一旦は『持病とうまく付き合っていく』という方法しかないと思われます。あなたの希望により、検査入院を行うことは可能ですが、次にいつ現れるか分からない症状のために、入院代を支払ったとしても、結果あなたの病気の原因を特定できる可能性は高くないと思います」
この後、何度かは別の診療所や総合病院で検査を受けることがありましたが、このときほど詳しく受診することはなく、また、各病院の医師も、そのときの話をすると、「同じ結果になりかねない」とそれ以上の検査を勧めてはきませんでした。また、別のアプローチで検証する医師もいましたが、新たな情報を得ることはありませんでした。
症状が出たある日、私はいつものように強い腹痛のために2日ほどほとんど何も口にせず、ロキソニンを服用して布団で横になっていました。そしてこれまで幾度としてきたように、スマートフォンで自分の症状について調べてみました。
すると、「家族性地中海熱」という病気の症状が私の症状と酷似していることに気づきました。もちろん、特に大きな病院で様々な検査を受けた頃辺りには特に熱心にインターネットでも調べていましたが、このような病名を見ることは一度もありませんでした。
私はすぐにSNSなどでそのような病気の方を探して、人生で初めてSNSで他人と連絡を取りました。数人の方とコンタクトを取りましたが、どの方も大変親切に接してくださいました。症状が出て会社を休んでいた私は次の日すぐに総合病院で診てもらい、検査を受けました。
その結果、2カ月後に「家族性地中海熱」であることが分かったのです。
確定診断に至るまで
インターネットの情報から、自分の病気が「家族性地中海熱」ではないかと考えたとき、まず地域にある総合病院を受診しました。受付で症状について詳しく記載した結果、医師からの説明は次のようなものでした。
「私も病名は聞いたことがあるけれど、指定難病であり、詳しくは分からない。調べたところ、確かにあなたが説明する症状と近いように感じる。あなたは専門医を紹介してほしいというが、それも調べないと分からないし、その先生に紹介状を書いたとしても、診断が困難な病気なので、あなたが思うように検査が受けられるかは分からない」
私はすでに自分で専門的な検査を受けることができる病院を調べていましたので、その医師に対し、その病院に紹介状を書くように依頼しました。「検査が受けられないかもしれない」とその医師は言いましたが、せっかく見つけた可能性を最初から諦めるという考えは私にはありませんでした。結果、私の依頼どおり紹介状は書いてもらえましたが、予約を取るのにも非常に時間がかかり、専門医による受診はかなり先になってしまいました。
専門医といっても、「リウマチ科」というだけで、「家族性地中海熱」の専門医というわけではないと思うのですが、先生は家族性地中海熱についても、専門的な知識を持ち合わせておられる様子でした。
先生によると、家族性地中海熱かどうかの判断は簡単ではなく、私の症状は頻度が低く、高熱が出ないことから、症状だけではなんとも言えないとのことでした。
家族性地中海熱の患者の多くに効果が表れる「コルヒチン」という痛風に使われる薬があり、まずはこの薬を服用することが一般的な治療法になっています。ただし、この薬には副作用があり、肝臓が悪い人などに対する処方には注意が必要となっています。
血液検査の結果、私の肝臓などの数値は悪くなかったことから、まずはこの「コルヒチン」を1カ月、1日2錠飲むように指示がありました。
また、診察の際、「遺伝子検査」を受けるかどうかの話がありました。遺伝子検査を受けると、家族性地中海熱かどうかの診察がしやすくなるが、費用もかかる上、受けたからといって直ちに確定診断となるものではないとの説明がありましたが、初めからそのつもりで専門医の受診を希望していた私は、すぐに受けたいと回答しました。
1カ月後、改めて血液検査を受けました。そして、診察室に入ると、先生からは、「肝臓の数値が悪化しているので、薬を1錠減らして様子を見る。遺伝子検査の結果はしばらくかかるのでまだわからない」との説明がありました。
さらに1カ月後、改めて血液検査の上診察室に入りました。肝臓の数値は平常の数値に戻っているので、『コルヒチン』を続けることができること、そして、遺伝子検査の結果から、「家族性地中海熱」と診断できると説明がありました。
おわりに
上記のとおり大病院の消化器科の医師には、「1週間で完全に回復するから大丈夫」と言われていましたが、実は家族性地中海熱は放置すると非常に危険な病気だと知りました。
さらに、現在は根治治療のできない病気ですが、私にとって自分の病気の正体が分かったことは人生で最大の衝撃の一つであり、とても喜ばしいことでした。
かつて調べつくしていたと思っていたインターネットの情報は、時の経過とともに、単純に量が増えるだけでなく、より有用性の高いものに昇華しています。そして、医療もまた進展しているのです。
病気の症状や程度は違えど、同じような苦しみを抱いている人は、おそらく想像を絶するほどたくさんいらっしゃるのだと思います。私にできることはほとんど何もないのですが、少しでもその方々やその方のご家族の参考になればと思い、ちょうど最近ブログを始めた友人のサイトに今回記事の掲載を依頼しました。
私のように何年も自分の病気の正体が分かっていないみなさん、どうか諦めないでください。私はもう5年以上も前に諦めていたのですが、このようになんらかのきっかけで病名が分かることもあるのです。
これからは私自身も「家族性地中海熱」について理解を深め、同じような苦しみを抱える方やその方を心配する周囲の方のためにできることが何かないかを考え続けていきたいと思います。
参考にしたサイト等
最後に、有用だと思われるサイトなどの情報を掲載いたします。もちろん私は専門的な知識は持ち合わせていませんので、誤った情報を記載しているようでしたらご連絡ください。
難病情報センター(家族性地中海熱のページ)
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4447
小児慢性特定疾病情報センター
https://www.shouman.jp/disease/details/06_05_015/
NOVARTIS
https://www.novartis.co.jp/stories/education-awareness/fmf-patient
※私はこのページをきっかけにして自分の病気を知ることになりました。
まさに私も職場では精神的な病気として扱われることもありました。
自己炎症性疾患サイト
http://aid.kazusa.or.jp/2013/